ヒカルの碁

マンガ『ヒカルの碁』全23巻を読みました。Kindleの電子書籍で、価格は23巻でおよそ1万円。

私は囲碁が趣味で、またプログラマーとしての仕事の研究で囲碁を扱っています。棋力は5級程度と素人に毛の生えた程度ですが、普通の人よりは囲碁に詳しいと言えると思います。
ヒカルの碁は知ってはいたものの、連載開始の1999年にはマンガは卒業していたため読んではいませんでしたが、通っている囲碁教室の先生に勧められて、重い腰を上げて読んでみました。
読み始めると面白く、一晩で5巻ずつ、5晩で読んでしまいました。

ストーリーは、小学生の少年が江戸時代の囲碁の名人の幽霊に取り憑かれて囲碁を覚え、プロ棋士になっていくというもの。
こう書くと荒唐無稽ですが、現実の囲碁業界を綿密に取材していてストーリーにリアリティがあります。絵も私が行ったことある日本棋院などが写実的な画風で描かれていてこれもリアリティがあります。
主役級だけでなく脇役も含めて魅力ある登場人物とストーリーに絵に惹かれ、非現実的な設定にも違和感がありません。

むしろ20年前と現在の囲碁界隈の違いに違和感を抱きました。
まず、なんといっても囲碁AI。20年前の囲碁ソフトの実力はGnuGoの5級程度でしたが、現在はプロに3〜4子を置かせるレベルです。現在だとヒカルの碁のストーリーは囲碁AIによるカンニングを疑ってしまうでしょう。強い打ち手を求めるならAIと打てば良いだけで、話が成り立ちません。17巻で神の一手はコンピュータから生まれると予言していて、それは実現しましたが、それだけです。
タバコも違います。登場人物の多くが(中学生も)タバコを吸っていますが、現在は日本棋院も碁会所も禁煙ですし、タバコを吸われるかたは少数派です。
男尊女卑なセリフも気になりました。
ただ、私がこれらの違いを感じた理由は、20年前に比べて人類が進化しているから、現在が20年前に比べて良い世界になっているからでしょう。

ストーリー内に出てくる盤面図は、私の実力では理解できませんが、出てくる囲碁用語はわかるので、話の筋は理解できます。
それでも、第1話に出てきた囲碁教室での詰碁の黒のサガリは少し考えて理解できました。こういうのわかると嬉しいですね。

全般に、囲碁マンガとして、大いに楽しめました。囲碁や囲碁業界に詳しくなり、囲碁に対するモチベーションが高まりました。